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作物の顔つきを日々うかがって - やもとほうれん草生産組合 西村栄一さん

やもとほうれん草生産組合
西村栄一さん

かつては「生産者のひそかな楽しみ」だった

「もう露地栽培は終わって、今はハウス栽培の終盤です。今年は暖冬のせいで、だいぶおがった(大きくなった)ね」と、「やもとほうれん草生産組合」の組合長・西村栄一さんは笑みを見せます。取材に訪れたのは2月中旬のこと。ハウスでは最後の出荷を待つちぢみほうれん草が、青々と葉を広げていました。

冬の寒さに当てることで葉に甘みを蓄える「ちぢみほうれん草」は、ここ東松島市矢本地区が発祥です。果物のような甘さは、ほうれん草が凍結防止のために備えている、「水分を減らし葉に糖度を蓄える」という性質によるもの。その昔、地元農家が自家用にひっそりと作っていたものを、市場で取り扱うようになったのは平成になってからでしたが、その良質な味わいがじわりじわりと評判を呼び、現在では「冬の味覚」として確固たる地位を得ています。かつては通常品種を寒締めしたものでしたが、現在はちぢみほうれん草向けの専用品種を寒締め栽培しています。中でも西村さんのところで栽培しているのは「寒味 極(かんあじ きわみ)」という品種。寒さによく反応して糖度があがるため、その甘さもひときわだといいます。

台風19号に泣かされた2019年の作付け

現在、矢本地区では西村さんをはじめ、30軒超の農家がこのちぢみほうれん草を作付けしています。しかし2019年は、とことん悪天候に泣かされました。特に未曾有の大災害を引き起こした台風19号により、一帯の畑は水浸しになり、小さな苗が押し流されてしまったそう。西村さんは当初「収穫はおそらく例年の1割程度だろう」との見込みを持っていましたが、望外の暖冬が功を奏し、最終的には例年の4割まで持っていくことができたといいます。

矢本地区のちぢみほうれん草は、糖度8度以上のもののみを厳選することで、そのブランドバリューを確かなものにしています。西村さんのところでは、糖度アップのために、魚の骨やコーヒーかす、米ぬか、もみ殻など有機質をベースにしたぼかし肥料を使っているそう。見せていただいた肥料は、しっかり発酵させた証である香ばしい匂いと、そしてサラサラとした手触りが感じられ、いかにも栄養がありそうです。

プロの技を知らなきゃモッタイナイ

家庭菜園では作付けが難しいといわれるほうれん草ですが、西村さんに生産のコツを訊ねると「よくわからないけど、やっぱり土かなあ」との答えが返ってきました。同じ科の作物を同じ土壌で作り続けると、「連作障害」によって収量が落ちてきます。それを防ぐためにトウモロコシやネギなどを輪作しながら、前述の肥料を畝(うね)へすき込み、ふかふかとした健やかな土壌をキープしています。

ちぢみほうれん草の甘さをダイレクトに感じるなら、おひたしが一番。西村さんが個人的におすすめしたいのが「しゃぶしゃぶ」だそう。「お肉をくぐらせた後の湯に、ちぢみほうれん草をさっと放ってすぐ引き上げる。食べるときはポン酢がいいね」。肉のダシをまとい、ほうれん草の甘さがより濃く、深く感じられる贅沢な食し方です。
きまぐれな天候と対峙しながら、作物の顔色をうかがい育成する生産者の日常。スーパーに並ぶちぢみほうれん草の裏には、西村さんたちが積み重ねた日々がにじんでいます。
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