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「日本一の味」を育てていく - 出雲浩行さん

出雲浩行さん

その評判を知らなきゃ「モッタイナイ」

「日本一」との呼び声も高い、閖上の赤貝。銀座の三つ星寿司店「すきやばし次郎」の店主・小野氏が「凄く肉厚なくせに、不思議に思えるほど柔らかい」と称えたことからも、その上質さがうかがえます。 今回は閖上の赤貝漁を取り仕切る「宮城県漁業協同組合」の運営委員長・出雲浩行さんにお話しをうかがいました。

かつてはそのほとんどが築地へ出荷されてしまい、地元の人の口に入る機会はめったになかったという閖上の赤貝。しかし東日本大震災で甚大な被害を受けた当地がクローズアップされることで、状況が変わってきたといいます。 「閖上の特産品である赤貝を『地元で食べたい』という声が上がりはじめたんですね。そこで殻が割れたり欠けたりして出荷できないものを、優先的に地元飲食店へと回すことにしたのです」(出雲さん)。こうして誕生したのが、閖上の新名物「赤貝丼」。お値打ち価格であることも相まって、瞬く間に人気グルメとなりました。

小さい赤貝は海に残して育てる

実は閖上の赤貝はすべて“天然もの”。そのため漁獲量は貝自身の産卵・ふ化に委ねられます。出雲さんは話します。「過去には小さいものまで獲り続けたことで、稚貝が枯渇してしまったこともありました。その反省を生かし、現在は殻の直径が5cm未満のものは海に残すようにしているんですよ」。赤貝漁には“マンガン”という、櫛の歯のような鉄具がついた網を使用します。この櫛の歯で海底をひっかくようにして貝を獲るのですが、歯の間隔が5cmほど空いているため、それより小さいものは網に入らない仕組みなのだとか。

漁期は9月から翌年6月末までで、7・8月は貝の産卵期のため休漁します。年を重ねるごとに貝は大きくなっていきますが、「水揚げするのは2年ものから最大15年ものぐらいまで。大きさで8段階にわけて出荷します。一番下のランクは割れたり欠けたりしたものですが、これも捨てたりせず、加工品や地元で提供する“赤貝丼”の材料になります」と出雲さん。ちなみに銀座の高級寿司店では、小さく握ったシャリをほどよく覆う8年~10年ものが至高とされているそうです。
(左上)選別作業(右上)船ごとに収量を量る(左下)仕分けされた赤貝(右下)セリの様子

赤貝が「台風到来」を待つワケ

赤貝の一番おいしい食べ方を出雲さんに聞いてみました。「もちろん新鮮なものを刺身で食べるのが一番ですが、和だしを張った鍋でしゃぶしゃぶにするのもいいですね。変わったところではカルパッチョ風にして、野菜と一緒に食べるというのも美味。いろいろ楽しんでみて欲しいですね」。

実は昨年の赤貝漁は10カ月ある漁期の内、たった37日間しか漁ができませんでした。原因は「貝毒」。海中に有害なプランクトンが発生し、それを食べた貝が毒化してしまったのです。昨年は例年に比べて台風が少なかったため漁場の海水が動かず、その結果有害プランクトンの大発生につながってしまった、と出雲さんは分析しています。「農家さんにとっては困りものの台風。しかし私たちにとってはまったく来ないのも困りものなんです。でもその分、今年は1年かけて大きくなった赤貝がたくさん獲れますから。悪いことばかりではないですよ」。 今年の味が楽しみです。
現在は宮城大学や県と協力しながら、閖上赤貝のブランド力向上にも力を入れているという出雲さんたち。今後はより広く、より多くの人たちに求められる食材となっていくことでしょう。
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