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地域の宝を、未来へ届ける ‐ 佐藤俊郎さん

佐藤俊郎さん

ネギを「曲げる」技術とは

すんなり真っ直ぐなものを見慣れた目には、少し不格好に映るかもしれません。ぐっと腰をかがめた「曲がりネギ」は、仙台の特産品です。実は成長過程で自然に曲がるのではなく、人が手をかけ「曲がるように育てている」ことを、ご存知でしたか? 今月は、岩切地区で曲がりネギを生産している佐藤俊郎さんにお話をうかがいました。

曲がりネギの「曲がり」は、ネギを成長過程で一度掘り起こし、25度~30度の傾斜をつけて植え直す「やとい」という作業によって発生します。傾けて植えられたネギは、体勢を真っ直ぐに戻そうとするため、白い部分が曲がり太くなるのです。佐藤さんのハウスの中は、現在やといの真っ最中。作業を終えた長ネギがみっしり隙間なく並んでいました。
実はこのやといという手法は明治~大正時代にかけて、岩切・余目地区の人によって初めて考案されたものなのだそう。「この一帯はかつて砂壌質で野菜生産に向くものの、地下水位が高く、長ネギのような深植えの野菜は土中で腐ってしまう土壌でした。そこで永野一さんという方が土中の水分過多への対策として、このやといを編み出したんです」と佐藤さんが教えてくれました。

緑の葉まで食べないと「モッタイナイ」

市場に出回り始めた頃は、その不格好さから不良品扱いされてしまうこともありましたが、いまや特産品としてすっかり浸透。岩切地区以外でも生産する農家が増えてきました。収穫時期は露地とハウスで年に2回。11月の現在は露地栽培の収穫が終わって、ハウス栽培のやとい作業を行う時期にあたります。ハウス栽培のものは、年をまたいで来年1月から収穫がスタート。まさに今が農作業の最盛期なのです

曲がりネギの魅力といえば、火を入れたときに感じる、あのとろりとした甘さでしょう。「ネギは曲げられるストレスに耐えるほど、甘くなるんです」と佐藤さん。「我慢を重ねて甘くなる」という言葉が、なにやら人生訓にも似た奥深さをにじませます。
曲がりネギは、特に甘みの強い白い部分が取り沙汰されがちですが「実は緑の葉の部分にはヌルという成分があり、ヒトの免疫力をとても高めてくれる効能があると言われています」と佐藤さん。おすすめは緑の葉をミキサーにかけ、マヨネーズとまぜる「ネギソース」です。ネギの香味とマヨネーズのまろやかさがほどよく、ディップソースにするとぴったりだそう。またお好み焼きに、千切りにした曲がりネギをキャベツの代わりに入れてもよく合うとか。食卓に馴染みの深い食材だけに、ちょっぴり意外な使い方が新鮮です。

地域の文化を未来へ残すために

▲「やとい」の手法で作られた曲がりねぎ。白い部分が太い下のネギの方が「余目ネギ」

実は仙台曲がりネギの原点と呼ばれる伝統品種が、ここ岩切地区にありました。それが「余目ネギ」。白い部分がどっしり太くシワが多いことが特徴で、その甘さはどの品種をも凌ぐといわれます。しかし現行品種と比べて病害虫に弱いこと、そして作り手が高齢化していることなどが重なり、生産数は減少の一途をたどっています。「昔はネギ畑の一部を収穫せずに残して、“ネギ坊主”になるまで放ってから種をとって……そうやって作り継いできたんですよね。私たちがここで作るのを辞めてしまったら、余目ネギは消えてしまう。未来へ向けて、その意義を伝えながら作り継いでいかないと」。

未来に残すべきは品種だけではありません。曲がりネギ、それを取り巻く地域文化もまた、地元の大切な宝です。現在岩切地区では、子どもたちが曲がりネギについて知り、考え、学ぶ機会を積極的に設けています。「実は今日、そこの岩切児童館で振付と歌詞を発表した“まがりねぎのハーモニー”というダンスを、地域の行事の中で子どもたちが披露しているんです」と佐藤さん。岩切の子どもたちはこうした経験を通じ、曲がりネギ、そして地域の文化に対する知識をどんどん深めます。
この地で明治より始まった「曲がりネギ」というバトンリレーは、より良く、より確かなものとして未来へとしっかり受け継がれていくでしょう。
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