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「人の手」を最小限にして育てる‐引俊梨園

突然訪れた「転機」に立ち向かう

引俊梨園

秋の梨と聞けば、ジャクッとした歯ごたえと豊かな果汁、そして澄んだ甘さが口によみがえり、ついつい喉が鳴ります。今回は、利府町の“梨作り名人”を訪ねました。

「引俊梨園」は引地俊彦さん・崇さん親子が営む梨農園。現在は70アールの圃場で、あきづきや幸水、秋水といったさまざまな品種を育てています。父の俊彦さんは2代目にあたり、目下3代目となる崇さんへ代表業務を引き継いでいるところだそう。
俊彦さん自身が父から農園を引き継いだのは1987年(昭和62年)のことでした。しかし俊彦さんは「厳密には、放り込まれた感じでしたよ」と述懐します。「父は急に亡くなってしまったのでね。当時私は消防署員でしたから、梨作りのことには門外漢。最初は何もわからなかった」。そこで腹をくくり、何人ものベテラン梨農家の元へ、ひたすら教えを請いに回りました。その行脚は地元だけにとどまらず、千葉や埼玉の方まで及んだと言います。 「もう『何も知らないので、教えてください』とね。でも、知識ゼロだったことは、かえってよかったのかもしれない。『これまでのセオリーにとらわれず、貪欲に良いところ取りしよう』と方針がすぐ固まりましたから」。

益虫の力を借りなきゃモッタイナイ

人が品種改良を重ねてきた梨は、人が手を借さなければ大きく甘い実を生らせることはできません。結実を前に病気や害虫にやられ、元気を失ってしまうからです。しかし引俊梨園ではあえて、「人の手」を最小限度にとどめる挑戦をしました。「化成農薬散布はギリギリまで抑えるようにしたんです。植物への影響ももちろんですし、それ以上に撒いている人間にも少なからず影響がありますから」。

病気を抑える殺菌剤は、最も効果が出るタイミングを狙ってピンポイントで撒く。害虫対策は、殺虫剤ではなく益虫の力を借りる。こうして農薬散布の回数を、町の農作物病害虫防除協議会で定めた規定の、半分以下まで抑えることに成功しました。特に益虫は、葉ダニをエサにするミヤコカブリダニやクモ、アブラムシを食べるテントウムシなどに頑張ってもらっています。あわせて受粉作業はマルハナバチにおまかせ。「虫たちに助けてもらって、人間はずいぶんラクさせてもらっていますよ」と、崇さんは笑顔で話してくれました。

 この農場で人が手を貸すのは主に「樹づくり」の部分です。梨の場合、枝があまり多いと、実に栄養が十分に行き渡りません。そこで枝を切る剪定で樹勢をコントロールします。また肥料は主原料に海藻や魚、廃鶏などを使った発酵有機物100%のものを使用し、毎年ほどよい樹勢をキープできるよう原料の配合を調整しています。

待ちわびる人たちへ笑顔を届ける

 梨は生のまま食べるのが一番ですが、料理に活用するなら、すりおろして肉料理のタレに混ぜるのもおすすめ。肉をしっとりとした歯ごたえにしてくれます。また梨がたくさんあって余らせてしまいそうなときはぜひコンポートに。水分が多く比較的足の早い梨ですが、コンポートにすればゆっくり味わうことができます。

梨の旬は8月末の「幸水」「秋水」にはじまり、9月末には「あきづき」と「かおり」が最盛期に。その後「新高梨」へとバトンタッチし、10月末まで続きます。圃場から1kmほどの直売所では、俊彦さんの妻・よし子さんが梨の試食をカットしていました。試食は旬にあわせ、常時2品種を用意。連日午前中で売り切れてしまうほどの人気ぶりで、取材中もたくさんのお客さんが訪れていました。 「毎年楽しみにしてくれる人がいるから、頑張らないと」とよし子さん。待ちわびるファンを笑顔にするために、今日も引俊梨園ではとことん梨づくりに向き合います。
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